体の底にあるあれが、そんな風に繋がっているとは

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「ずるっ」
 
そんな音がして、足の裏が宙に浮いた。
 
手は、幹を掴もうとあがくが、こちらも、もう届かない位置だった。
 
頭の重さに引っ張られ、仰向けになっていく。
 
背中が地面に近づいていく。
 
緑の葉が遠くなり、空が離れていく。
 
それまで見たことのない風景、想像したことのない風景が目の前にあり、
 
耳の周りの空気が、前方に吐き出されるように流れ、景色がどんどん逆走していく。
 
 
 
 
 
「どんっつ」
 
鈍い音が、背中側から前のほうに肉体を通して伝わって出た。
 
足が滑ってから、音が出るまで、時間にしてほんの数秒だったろうに、なんでああいう時は、長く感じるスローモーションになるのだろうか。
 
どんっと 音がしてから、ほんの少しして、強い痛みが襲ってきた。
初めての痛みは、痛みそのものの辛さもあるが、この後一体どうなるのだろうかという恐怖もとても大きい。
 
 
あ、息が出来ない。
 
一息、たった一息、息を吸うだけで、苦しさから逃げられるだろうに、その一息が吸えない。
 
 
とても苦しい。
吐くことも、吸うこともどちらも禁じられた状態に気がついた。
 
いつまで吸えないのだろう。
いつまで止まっているのだろう。
 
とても不安だ・・・・・・
 
 
 
 
これは、小さかった頃の私の事。
 
昔の男の子にありがちだが、クワガタやらカブトムシを取りたくて、近所で木登りをしていた。
何度か登ったことがある木だからと、きっと安心していたのだと思う。
 
でも、その日は、何かに気を取られて、つい足が滑ってしまい、自分の身長の数倍はある位置から落ちてしまったのだ。
  
 
強く打った背中が詰まったようになり、息を吐くことも吸うこともできなかった。
このまま息ができなくて死んでしまうかと思って本気で焦った。
 
しばらくしてから、背中をほんの少し丸めたら、息がピンポン球半分くらい吸えた。
  
 
一緒に行った友達は、腰が引けているのが目に入ったから、私の顔は、苦悶の表情だったんだと思う。
痛みはなかなか引かないし、自分がどうなっているかもよく分からない。
 
大人を呼ばないとダメだ。
 
そう思って、まだ息が辛い中で、手招きして友達を顔のそばまで呼んで、少しずつ言葉を伝えた。
 
私の家にいって、父親を呼んで、と。
 
 
たまたま日曜日だったから、運が良いことに、その日は父親が家にいたのだ。
 
 
しばらく、うんうんと、落ちた木の下で仰向けになったまま悶えていたら、父親が走ってきた来た。
 
顔をみて、申し訳ないなと思ったが、心底ホッとした。
 
あとは、抱えられて家に帰ろうとするところの記憶があるが、それ以外はもう忘れている。
 
 
ただ、痛みと恐怖と、最後の安心感だけは、大人になった今でも、頭ではなく体が忘れずに覚えている。
 
 
 
 

体は命の危険に繋がる恐怖や痛みなどを、無意識に強く覚えてしまうと私は思っています。
 
また長く生きていると、このようなことが、時々あります。
 
流石に木には登らないだろうと思っていても、ごく普通に歩いていて、角を曲がった時に、不意に誰かや、何かに強くぶつかったりしたら同じようなこと。

それに単独で滑って転ぶだけでも、状態が辛かった時にはやはりそうなりがちです。
   
すると、どうなるか。
不測の事態に応じようと防御体制が敷かれます。
それが普段の姿勢に影響をして、どこかが疲れて凝ってしまうことに繋がります。
 
 
私には、木から落ちた時に、背中の上部と、頚椎の左側についてしまったものを見つけました。
何度、体の調整をしても、一時的に快適になっても、再び戻りやすい。
 
一向に快適のままにならない。 
それで、これに気がついたのです。

日々の生活における体の使い方を調えていって、どんどん、よくなるなら何も問題はありません。

ただ、快適さが、何度も次第に失われるような傾向があるならば、体に深く深く深染み付いた恐怖や痛みが、快適になる邪魔をしている可能性が、ほんの少し浮かび上がります。
 

そんなときには、施術の際に、体から滲み出る情報をもとにして、ご本人に言葉で問いかけます。
ご本人の記憶を遡って出てきたことを、エネルギーを届けるのとともに一緒に紐解いていくと、体の変化から深い部分に染み付いたものが薄れていくのを捉えることができます。

また、これまで頑張ってきた、ご自身の肉体のあちこちにも、感謝の意を自ら伝えていくと、本来の状態にとても戻りやすくなります。

ここまでくると、本来の状態を大変キープしやすくなり、結果として快適さが長く続くようになります。

今抱えている悩みや、解決しなければならない、何かがあると、その悩みの影響で体に不調がでることが良くあります。
ただ、もし、悩みが全くないのに、体もそこそこ動かしているのに、どうも変だなあと思ったら、これまでの生活で、何があったかを是非思い出してみてくださいね。

原因がわかり、意識をそこに向けるだけでも、体は緩み始めてくれます。
きっと、なにもしないよりも、ずっと楽になれるのに気がつくと思います。